かごしま文化情報センター(KCIC)

TRADITIONAL ARTS伝統芸能

地域に根付き、人から人へ伝承される伝統芸能=TRADITIONAL ARTS。その土地独自の歴史ある芸能文化を大切に集積・発信します。

レポート「わらじづくり体験ツアー」2018.07.28

レポート「わらじづくり体験ツアー」2018.07.28

7月28日(土)、さつま町中津川地区にて「わらじづくり体験ツアー」が開催され、鹿児島市の伝統芸能保存団体の関係者ら約40人が参加しました。

このツアーは、昨年の伝統芸能ネットワーク会議にて共有された、「地域にわらじを作れる人がいない」との現状を受け、踊り衣装のひとつでもある「わらじ」の製作方法を学ぶべく「文化薫る地域の魅力づくり実行委員会」が企画したものです。

また、あわせて「各地区が抱える課題解決に向けたきっかけにしてほしい」と、さつま町中津川地区の「金吾様踊り活性化実行委員会」の方たちとの交流を通じて、伝統芸能を通じた地域の取り組みを学びました。


はじめに向かったのは中津川地区に伝わる「金吾様踊り」を奉納する「大石神社」です。

大石神社では中津川小学校の児童や、「金吾様踊り活性化実行委員会」の皆さんが出迎えてくれました。

児童がひとりずつ神社の歴史や踊りについて説明すると、ハキハキと分かりやすい説明に参加者から大きな拍手が送られました。

 

 

次に中津川交流館で、わらじづくりを体験しました。材料のわらや道具などは、「金吾様踊り活性化実行委員会」の皆さんが準備してくれました。

本日の講師は91歳の諏訪さん。わらじ作りの大ベテランです。

 

 

諏訪さんは、この地区の踊りで使われるわらじのほとんどを作っています。

わらじ作り職人は地区内でも少ないため、実行委員会のメンバーも諏訪さんに作り方を習っています。

わらじの材料は、もち米のわら「もちわら」です。

 

 

まず「わらころ」という長さ30センチ程度の木の槌で、わらの束を叩いていきます。

400回ほどしっかりと打ち込むことで、わらが柔らかくなり編み込みやすくなります。

 

 

諏訪さんが実演を始めると、手の動きに参加者の視線が集中します。参加者はカメラやスマートフォンを手に、流れを記録していました。

 

 

ビニールひもを両足の親指にかけて、鼻緒や足を固定させる部分となるビニールひもとわらを編み込んでいきます。

諏訪さんの慣れた手つきで、次々と編み込まれていくわらじ。そのスピードに参加者も圧倒される中、15分ほどで片方が完成しました。

 

 

次に参加者がわらじ作りを体験。3つのグループに分かれて、諏訪さんや実行委員会のメンバーから指導を受けながら作っていきます。

最初のビニールひもとわらを編み込むことに参加者は大苦戦。なかなか思うように進みません。しかし最初が肝心ということで、諏訪さんらがじっくりと時間をかけて編み込み方を指導してくれました。

 

 

スタートして1時間が過ぎても、誰もその場から離れることなく集中。少しずつコツを掴み、各々のわらじが完成しました。

 

 

体験終了後は、大石神社秋季大祭で奉納された踊りの様子がDVDで紹介されました。特に50数年ぶりに復活した「地割舞(じわりまい)」という踊りが、参加者の注目を集めていました。

 

 

意見交換会では、それぞれの団体から各地区の現状や課題について発表がありました。共通していたのは「人手・後継者不足」や「練習時間の確保の難しさ」です。

中津川では地割舞が復活した流れで、若者が声を上げて青年団を結成したそうです。

実行委員会の寺脇さんは「祭りで踊ることは名誉であり、幅広い世代の住民にとって良い刺激になっている」と話していました。

 

 

大人たちがわらじを作っている間、子どもたちは一緒に川で魚釣りをしたり昼食を取ったりして交流を深めていました。

別れ際はバスに向かって手を振り見送ってくれました。子どもたちも短い時間の中で、よい思い出が出来たようです。

 

 

参加者からは「難しかったが、しっかり覚えて作れるようになりたい」などの感想が寄せられました。

重要な踊り道具のひとつである「わらじ」の作り方を習得し、次の世代に伝えていくことは、伝統芸能を存続させることにも繋がります。

 

本ツアーにおいて、わらじ作り体験だけでなく、伝統芸能の継承に取り組む中津川地域の実態を見ることができたことも、参加者にとって大きな収穫となりました。

 

「文化薫る地域の魅力づくり実行委員会」は、これからも伝統芸能を後世につなぐサポートをしていきます。

 

 


取材&写真:かごしま文化情報センター(KCIC)