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Session 5 Disaster prevention x ART

「モシモをイツモにカエル、アーツ」

テーマ:防災×アート

ゲスト:

永田 宏和 (NPO法人プラス・アーツ 理事長)

1993年大阪大学大学院修了。2005年阪神・淡路大震災10周年事業で家族が楽しみながら防災を学ぶプログラム「イザ!カエルキャラバン!」を開発。2006年NPO法人プラス・アーツ設立。現在、首都圏、関西圏など全国各地及び、インドネシア、タイ、フィリピン、中米、南米など海外での防災教育普及に積極的に取り組む。東京ガス、東京メトロ、三井不動産グループ、無印良品、NHKなど企業・メディアの防災アドバイザーも数多く務めている。NHK・Eテレ「東北発☆未来塾」TBS「情熱大陸」、日本テレビ「世界一受けたい授業」出演。
http://www.plus-arts.net/


2016年12月2日(火) 18:30〜20:30 参加者:22名

日本では、ここ数年で大きな自然災害をいくつも経験しています。どの場所でも起きる可能性のある災害に対し、防災に関する意識は高まりつつありますが、モシモの時のことに対して当事者意識を持つのは難しい。だからこそ、特別なことをするのではなく、イツモの生活の中で備えておきたい。モシモをイツモに。アーツの力で備える防災について、地域の人たちがお互い仲良く、生き生き暮らす元気なまちになる「地域豊穣化」やアイデアや工夫、デザインやアートを注入して、事業やプログラムの新しいカタチを生み出す「+クリエイティブ」などについてお聞きしました。


クリエイティブの意味は「創造的な」。
つまり、「新しい何かを作り出す」こと。
そして、「創り出す」ために「既存のものをぶち壊す」という意味もその語源に存在する。

種※1のノウハウの一つ目が不完全プランニングと呼ばれてるものなんですけど、つまり完璧につくらない。活動とかプログラムを地域に持っていく時に、いかに余地を残すか、関わりシロを用意しておくかということなんですよ。これ(図1)見ての通り、穴があって隙だらけでしょ?

Session photo 1

そうしたら、来た人たちがどうなるかっていうと、一緒に作ることができるんですよ。要するに、一緒に参加して、一緒に作り上げていくプロセスに巻き込まれていくんですよね。それはどういうことが起きるかっていうと、みんなが関わって、みんなが一緒に作っていく間に、それは自分のもの、その人のものになるんですよ。俺たちのものになるんですよ。

Session photo 2

例えば、かえるキャラバンって僕らが作ったんですよ、もともとは。藤 浩志さん※2と一緒に。だけども、あきらかに獲得されますよね。地域の人達のものになっています。そういう風に種をつくる時に考えないのは、さっき言ったように地域の人が一番間違っている考え方で、全部作り込んじゃうってことなんですよ。役割も決めちゃうわけですから。行ったら、手伝えないんですよ。みんな、いるから。スタッフのやることが決まっていて、餅つきでも餅食べるしかできないでしょ?つかせてはくれるかもしれないけど。もっと関われるように、何か持って来てとか、あんた何が得意なん?って。藤浩志さんっていつも得意技を聞くんですよ、最初に。ワークショップやったら。全員の得意技を。僕、最初なんでこんなこと聞くのかな?と思ったら、全部使ってるんですよ、最終的に。その得意技を発揮する場を作りますよね。そういう考え方が基本にないと、やっぱり主体にはなれないというか、お手伝いよりももうちょっと主体的に関われる関わりシロがいるかなと思います。で、もう一個。関わりシロさえ作ればいいんですね。隙だらけでっせと。ところがこれ(図2)、さっきの絵と違うのは、中が光ってないでしょ?

Session photo 3

つまり、空っぽってことは、つまんないことが来た時どうなるかってことなんですけど、どうなると思います?しょうもないイベントで手伝ってって言われても、みんな帰っちゃうでしょ?そんなもんやってる暇ないわとか、わしら今忙しいねんと。だから、何かを持って行った時に、それは非常に魅力的なものじゃないとダメなんです。惹きつけられる魅力を発していないといけない。それは、すごく楽しそうだとか、美しいとか、感動できそうとか、普段でけへんことできそうやとか、特に子どもさん連れて親がくる時とか子どもにそういう体験させたいと思うわけでしょ?どこか遊びに行くよりも、この体験をさせたいと思えるかどうか。こういうことを、魅力を発揮させようと思ったら、クリエイティブっていう要素が必要なんですよ。だから僕たちは「+クリエイティブ」っていうのが、デザインセンターのコンセプトも「+クリエイティブ」でもあるんですけど、そうするとみんな寄って来て、寄って来たら手伝えるみたいな二段工法なんですよ(図3)。

Session photo 4

だからどっちが欠けてもダメ。「+クリエイティブ」で魅力に溢れてて、近づいて来て、近づいて来たら手伝えるみたいな。そういう風に種を作れるかどうかってことが、最大のポイントですね。そうすると「+クリエイティブ」ていうので、地域に行くとおじいちゃん達が「わしら横文字わからん」みたいな感じになるんで、いやいやちゃいますよと。クリエイティブって創造的なって意味だけども、もっと語源を辿ると、新しい何かを作り出すんじゃなくて、既存のものをぶち壊すっていう意味も隠れてるんですよ。ということはどういうことかっていうと、地域にもそうだし、役所でもそうだし、新しい事業をつくろうったって、無理なんですよ。神戸市も全然財政が無理やから、予算通らないんですよ。新しい事業。そんな地域ばっかりですよ。全国的にそうだと思います。潤沢にあるのは東京都くらいちゃいますか?なので、今までの事業を見直した方がいいんですよ。地域も今やってることをよくした方がいい。新しいこと何かやりませんか?って持って行ったら、「いやぁ、もうわしらも忙しいんやぞ」と言われるのが関の山ですね。本当に忙しいんですね、皆さん。そうじゃなくて、いつもやっている、マンネリ化しているのがあるでしょ?とか、困っているのあるでしょ?といったら絶対ありますから。それをよくしてあげるというか、よくするっていう方が、絶対に可能性あります。

Session photo 5

僕は神戸市のデザインセンターでやっているのは、それを全部やっているんですよ。だからいまどうなってるかというと、神戸市のいろんな部局が、順番待ち状態なんですよ。僕らは、ゼミをやっているんですけど、それを一個一個持って来た課題を市民とか、学生とかいろんな人を集めて、3ヶ月くらい揉んで揉んで、リサーチして、議論して、アクションプランを「こうやったらどうや」っていうのをその部局に返してあげるんですけど。20回やって19事業ぐらいが動いているんですよ。もう全部事業化しているんです。それくらいの実績が上がっているんです。だからそうなると、私の課題も面倒みてってなって、最近、道路部さんとか公園部さんが来たりとか、自分で考えろって言いたくなるんですけど、そんな状態。ということは、つまり世の中の行政も地域も、困っているわけです。なんかマンネリ化してやっているけど、これでええとは思ってないんやけど、なんとなしにそのままやってるっていうものだらけなんですね。だからそれを見直せたら、見直せるスキルというか行動力を持つと、すごい活かせるんですよ。だから、地域とか地方の足らないのは種なんですよ。種を作れないんですよ。

Session photo 6

※1 地域で行う活動やプログラムの比喩的表現。
※2 鹿児島出身の美術家。秋田公立美術大学教授。

セッション 参加者の声

  • ・楽しく学べる防災、いろんなところに広がってほしい。
  • ・とても興味深くうかがいました。今後の仕事にいかせるヒントをたくさんいただきました。ありがとうございました。
  • ・防災に限らず、まちづくりに関する話も聞けて大変勉強になりました。デザインや魅せ方について今一度考えさせたれました。
  • ・目からウロコ的な話でおもしろかった。マンネリ化した防災訓練が変えられそうです。ありがとうございました。
  • ・防災をその分野のみでなく、もっと広い視点で捉えることも必要だなと思えました。ありがとうございました。

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