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Session 4 Architecture x ART

「モノセレモニーズ」

テーマ:建築×アート (長期ワークショップ)

ゲスト:

辻 琢磨 (建築家 /403architecture[dajiba])

1986年静岡県生まれ。2008年横浜国立大学建設学科建築学コース卒業。2010年横浜国立大学大学院建築都市スクールY¬GSA修了。2010年 Urban Nouveau*勤務。2011年メディアプロジェクト・アンテナ企画運営。2011年403architecture[dajiba]設立。現在、滋賀県立大学、大阪市立大学非常勤講師。2014年「富塚の天井」にて第30回吉岡賞受賞。
http://www.403architecture.com/

 

会田 大也 (ミュージアムエデュケーター)

1976年東京生まれ。2000年東京造形大学造形学部デザイン学科造形計画専攻卒業。2003年情報科学芸術大学院大学[IAMAS]修了。2003年開館当初より11年間、山口情報芸術センターの教育普及担当として、メディアリテラシー教育と美術教育の領域を横断する形で、オリジナルのワークショップや教育コンテンツの開発と実施を担当する。2014年より東京大学大学院ソーシャルICTグローバル・クリエイティブ・リーダー[GCL]育成プログラム特任助教。


事前説明会 2016年9月22日(木・祝) 14:00〜16:00 参加者:12名
ワークショップ 2016年11月23日(水・祝)〜27日(日) 参加者:9名
展示 2016年11月27日(日)〜12月20日(火)

作家・作品と鑑賞者の良好な関係を模索するミュージアムエデュケーターと環境や文脈を読み解きながら空間を創造する建築家が協働して考案したワークショップ「モノセレモニーズ」を通して、アーティストの思考を参加者に体験してもらいました。

「モノセレモニーズ」は、ワークショップの参加者によって開催される、ささやかな芸術祭。ひとつのモノがその機能を終えるまでのエピローグではなく、そこから生まれ変わり、新たに風景として溶け込んでいく過程を、現代の「セレモニー」として捉え、地域に住む人々の思いが詰まった「モノ」が、新しい使い手の元に渡り、異なる役割を持って、風景となっていく「もの」がたり。

ワークショップでは、モノ・ヒト・場所を公募し、14個のモノ、9人の参加者、6箇所の場所が集まり、それらをマッチングし、


モノセレモニーズの流れ

1)生まれ変わるモノ、生まれ変わらせる人、そして場所の悩みを募集する。

Session photo 1

2)モノのこれまでを振り返り、大切なことをピックアップする。

Session photo 2

3)モノの次の生き方を考え、次にモノが置かれる場所に合わせて、改修案を考える。

Session photo 3

4)改修案を元に作業し、人の手によって、モノを生まれ変わらせる。

Session photo 4

5)生まれ変わったモノを新しい場所に置き、モノが新しい生活を始めていく。

Session photo 5

募集した人・モノ・場所の条件

□モノの募集

捨てたいとは思っているけれど、捨てられない思い出のモノ。
例)捨てられない嫁入り箪笥 など
・モノの名前
・モノへの思い出
・モノの写真
※モノの素材は、以下の条件に合うのもをお願いします。
・分解・加工が容易な素材であること
・電化製品でないこと
・容易に自然腐食しないもの
・耐久性があるものが望ましい。

□ヒトの募集

辻氏、会田氏とともに、リデザインに挑戦してみたいヒト。完成した成果物の出展者として、展示物のキャプションに記載。

□場所の募集

現状、悩みを持っている場所。
例)昔からある古いオルガンを動かしやすくするためのコロ付きの台座が欲しい など

集まったモノ
・マージャン牌
・すごく重い棚
・カタカタ
・テニスラケット
・製図板
・ちゃぶ台
・ベビーベッド
・おままごと用台所
・中華料理屋円卓
・鏡台
・木の椅子
・箱椅子
・木製大型ブロック
・良い積み木

□提供された場所

1)かごしま文化情報センター (住所:鹿児島市易居町1-2 時間: 10:00〜18:00 定休:水・日曜日)
2)ふじヶ丘保育園(会期中は、かごしま文化情報センターにて展示)
3)レトロフト(住所:鹿児島市名山町2-1 時間: 11:00〜19:00 定休:月曜日)
4)ホテルニューニシノ(住所:鹿児島市千日町13-24 時間: 8:00〜22:00 年中無休)
5)KENTA STORE(住所:鹿児島市東千石町10-12 時間: 11:00〜19:00 定休:木曜日)
6)凡 (住所:鹿児島市東千石町1-15 時間:12:00〜25:00 不定休)

□参加したヒト

北野 真衣・穂満 亮祐・飯泉 綾子・入田 裕夏子・大山 佳菜


作品

ハモンドの踊る靴

辻 琢磨・会田 大也 (レトロフト)

Session photo 6

レトロフトの地下室に鎮座するハモンドオルガンを簡単に移動させるための台座の計画です。ハモンドオルガンは、高価なパイプオルガンの代わりにゴスペルミュージックを生み出し、その後のジャズミュージックに影響を与えたと言われています。

もともと靴の問屋が入居していたレトロフトの倉庫に長らく置かれていた、靴箱と思しきすごく重い棚の側板が台座の床面としてオルガンの脚を受け、林光華園の旧店舗で使われていた中華テーブルを台座の側面に転用してます。オルガンの脚元と台座の突起の組み合わせは脚鍵盤を模し、中華テーブルの裏側のダークブラウンの表面は、このハモンドオルガンの色との調和を図っています。台座の分だけ演奏位置が高くなったため、ジャズのスタンディング演奏にも適した高さに生まれ変わっています。靴という人の脚元を支えた棚の素材が、オルガンの脚元を支え、人を集める円卓の曲線を利用することで、新しい「靴」を履いたオルガンに再び多くの人々が集まるようにという思いを込めました。(辻 琢磨/会田 大也)

 

場所:レトロフト
人:辻 琢磨/会田 大也
モノ:すごく重い棚/中華料理屋円卓


インサイドメモリー

北野 真衣 (ふじヶ丘保育園)

Session photo 7

真新しい外見の中には長年子ども達に愛されたモノが詰まっています。どのモノも長年愛用されていたらしく所々汚れていたり、塗装が剥げていたりしています。この収納棚には、Sさんのお嬢さんが遊んでいたカタカタ、Mさんからいただいた色調の美しい積み木の二つを使いました。この二つのモノはどちらも子どもの健やかな成長を願ってつくられたにちがいありません。新しいモノへ生まれ変わっても子ども達との物語は途絶えてほしくないと思い、ふじヶ丘保育園の収納棚に転用しようと思いました。

箱の仕切りは積み木とカタカタで作り、箱の強度は積み木で補いました。箱の中をのぞけば、かつて子ども達が遊んだ思い出がつまっています。かつて遊んでくれた子ども達との思い出を懐かしみながら新しいモノになって再び子ども達と会う日を楽しみにしていることでしょう。(北野 真衣)

 

場所:ふじヶ丘保育園
人:北野 真衣
モノ:カタカタ/良い積み木


かがみん

入田 裕夏子・大山 佳菜 (KENTA STORE)

Session photo 8

KENTA STOREは甑島から発信された、人とモノと場所を繋ぐ、鹿児島の食と暮らしの専門店です。素敵なお店ですが、一見さんが少し入りにくい、何のお店なのかわかりづらいというオーナーの山下さんのお話を受けて、このような三面で構成された看板を制作しました。素材として用いているのは、旅館のお婆さんが大切にしてきた姿見と鏡台の鏡、そして建築学生が使っていた製図板。その二面の鏡が映し出すのは、KENTA STOREのある天文館のアーケードとお店の中、「ちょっと覗いてみよう」と思わせるようなデザインを目指しました。そして三面目は、KENTA STOREの方々がお店から伝えたいことを毎日自由に書いていただけるように、多くのデザインが生まれてきた製図板を転用し黒板としています。天文館という街に溶け込みつつ、きらびやかな看板が列ぶアーケードで華美な装飾を避け、「シンプルに目に留まる」ことを意識しました。お店とお客様とのコミュニケーションのツールとなることを願っています。(入田 裕夏子/大山 佳菜)

 

場所:KENTA STORE
人:入田 裕夏子/大山 佳菜
モノ:鏡台/製図板/ちゃぶ台


街の報せ

穂満 亮祐 (ホテルニューニシノ)

Session photo 9

今回制作したのはホテルニューニシノの受付カウンター横に置かれている観光や飲食、イベント、地図といった内容のチラシやパンフレット類を置くための収納棚です。モノにはふじヶ丘保育園で長く使われてきた木製大型ブロックを選びました。ブロックを開いてみると、約20年間子ども達に使われて傷がついたり色が変化したりした外側とは異なる美しい木の面が現れ、この内側にチラシ類を入れて収納として使うことで用途の転換を図っています。これまで使われてきたことによる味のある外面と全く触れられることのなかった無垢な内面の質のギャップに加え、子ども達の「遊び」という長期的な歴史と短期的に更新を繰り返すフレッシュな「報せ」が対を成して共存していきます。収納は壁にある既存のバーにフック状の金具を用いて取り外しできるように固定し、時期によって変化する報せの量に可変的に対応できるようにしています。これまで机の上に密集していたチラシやパンフレット類を、ホテルのお客様方が思わず目に入り手に取ってしまうように、壁を広く用いて配置しました。(穂満 亮祐)

 

場所:ホテルニューニシノ
人:穂満 亮祐
モノ:木製大型ブロック


ライフ・イズ・ビューティフル

飯泉 綾子 (凡)

Session photo 10

凡は、自由を愛する人たちの憩いのバーです。飲み屋なのに、ただ寝に来るだけの人がいたり、開店時間はまちまちであったり(Facebookで毎日お知らせ)、店もお客さんも自由に過ごしています。そんなお店には不思議な本棚があります。哲学だったり宗教だったり、果ては女性の下着の歴史の本まで!置いてあります。まるで子どもの知りたい心と同じような、無邪気な知的欲求を満たす書籍たちと言えます。この場所に、ふじヶ丘保育園で子ども達が使ってきた椅子を転用した本棚を製作しました。素材の木の板には、保育園の歴史(サイン)がそっと記されています。大人たちが、いつでも子どもに還ってきても良いように…そんな想いも込めて、このサインを残してあります。本棚の色は、店舗の内装のイタリア風の色彩にも合っていると思っています。イタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)に登場する素敵な本屋さんの雰囲気を思い出しながら製作しました。(飯泉 綾子)

 

場所:凡
人:飯泉 綾子
モノ:木の椅子/箱椅子


スタンドアップスタンド

市村 良平 (かごしま文化情報センター(KCIC))

Session photo 11

鹿児島市の「文化薫る地域の魅力づくりプラン」を推進する活動拠点として設置されたかごしま文化情報センター(KCIC)。しかし、展示やイベントなどで使用される什器はどんなシチュエーションでも使用できる中庸なデザインのもので、どことなく無機質で冷たい印象があるのも事実です。普段使っている金属製のキャプションスタンドも、「文化薫る」とは言い難いものでありました。そこで今回、KCICが使うに相応しい什器として「キャプションスタンド」を、製作しました。材料にはベビーベッドの手すりの支柱と、保育園の子ども用椅子の背もたれを転用しています。装飾的な支柱に、色付けされた背もたれを適度な大きさにカットして土台としました。大中小の3種類の高さを揃えたことで、これまで欲しいと思っていた子どもの目線にあった高さのスタンドも誕生しました。赤ちゃんが生まれ、子どもが成長して「立ちあがる」ように、鹿児島の文化が流転・生成していくようなプロジェクトがたくさん「立ちあがる」ことを願っています。(市村 良平)

 

場所:かごしま文化情報センター(KCIC)
人:市村 良平
モノ:ベビーベッド/木の椅子


[技術サポート] 宮園 孝都

[サポーター] 応援団員W  江口 美久  森永 涼平

セッション 参加者の声

  • ・面白い企画があることを知れて良かったです。
  • ・参加型は人脈もふえそうで、おもしろそうだと思いました。
  • ・公共系のイベントとしては、とてもやわらかい企画だと思いました。楽しみです。

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